mirume

提案の記録

003 開業の相談を、断った記録

依頼。松阪城の城下町に土地を借りられることになった方から、開業する茶店に茶を卸してほしいという相談でした。長くJAに勤め、節目に自分の店を持ちたいという、初めての開業です。手伝ってほしいという依頼ではなく、取引の申し込みでした。

検討。直接お会いして話を伺い、立地を調べました。駅から徒歩20分ほど。観光の人通りが強い場所ではなく、その店を目的に来る人でなければ届きにくい立地でした。固定費は、家賃が十数万円、建物の建築に数千万円。返済を合わせると月30万円前後の支払いが、売上の立たない月にも出ていきます。赤字の期間を2〜3年支えられる備えがあるか、あるいはこの見立てを超えてくる何かがあるなら応援するつもりで伺いましたが、初年度から成り立つ想定でした。そして、ご家族がいました。一人で挑戦して一人で失敗するなら、それはご本人の選択の範囲です。ご家族を巻き込む形は、取り返しの質が違います。

判断。茶を卸せば、mirumeの利益にはなりました。断る理由は、こちら側には一つもありません。それでも、続かない見込みが強い開業の背中を、茶を卸すことで押すことはできませんでした。余計なお世話かもしれません。それでも私たちは、長く続く店に、茶を出し続けてほしいのです。

分岐の条件。このとき、土地の契約も、建物の契約も、工事の見積もりも、まだ何一つ始まっていませんでした。無傷で引き返せる段階だったから、引き返す選択肢を提示しました。もし店が建ち、従業員を雇い、開業日が決まった後のご相談なら、判断は反転します。そのときは、成立させる側に全力で回ります。

代替案。開業をやめるのではなく、一旦送ることを提案しました。まずはポップアップや間借り、近隣の店との関係づくりから。ワークショップでも、茶を淹れて出すだけでもいい。それを1年やって、それでも店をやると決めたなら、もう一度声をかけてください。そのときはお取引しますとお伝えしました。

結果。二度目のご相談は、ありませんでした。

私たちは、失敗しそうに見えるビジネスの背中を押すことはしません。断ることも、始め方を変える提案をすることも、普通にあります。